腰痛予防方法をご存じですか?じつは腰痛の原因のひとつが、お腹のインナーマッスル(腸腰筋)が硬くなること。腰痛の人の多くが、腸腰筋が固まり、筋力が弱っている状態です。
デスクワークなど、長時間座ることが多い人はとくに硬くなりやすい腸腰筋。今回は、腸腰筋を柔らかくし、筋力をアップすることで腰痛予防に繋がる理由と実際のストレッチ方法をご紹介します。
この記事はこんな人に役立ちます
・デスクワークの人
・長時間座っていることが多い人
・運動することが多い人
・あまり歩かない人
・歩くスピードが遅くなったと感じている人
・歩くときつまづくことがある人
・猫背の人
・反り腰の人
腰痛に関係が深い「腸腰筋」とは?
腰痛に悩んでいるときに、改善のためにまずお腹をケアしようと思い立つ方はほとんどいらっしゃいません。しかし、じつはお腹の筋肉である「腸腰筋(ちょうようきん)」は、腰痛との関係が非常に深く、腰痛の改善を考える際にチェックするべき2つの重要な部位のうちの1つなのです(もう1つの重要な部位「仙腸関節(せんちょうかんせつ)」についてはのちほどご説明します)。
腸腰筋は上半身と下半身をつなぐ筋肉
腸腰筋は、「大腰筋(だいようきん)」と「腸骨筋(ちょうこつきん)」の総称です。
「大腰筋」は背骨の腰の部分(腰椎・ようつい)から、「腸骨筋」は骨盤の上部から、ともに太ももの骨(大腿骨・だいたいこつ)の股関節下の内側までついています。
上半身の中心から、下半身をつなぐ筋肉です。
背骨と足を、股関節をまたいで、つなげています。
このため、腸腰筋が収縮することで、股関節を前に曲げる動きや、足を上げる動きができ、歩く、座る、階段を上るなどができるのです。
腸腰筋はお腹のインナーマッスル
一言で腹筋といっても、お腹にもたくさんの筋肉が存在しています。
筋肉には、大きく分けてアウターマッスル(表層筋)とインナーマッスル(深層筋)があり、腸腰筋はインナーマッスルに含まれます。
アウターマッスルは、鍛えて引き締めると、皮膚を通して手で触れやすく、形を見ることもできる筋肉です。天然のコルセットと言われる腹斜筋や、シックスパックと言われる腹直筋が、アウターマッスルにあたります。
対して腸腰筋などのインナーマッスルは、アウターマッスルよりも手で触れにくく、外から見ることはできませんが、からだの中心で重要な役割を担っています。
腸腰筋は日常のほとんどの動きを支えている
腸腰筋は、重要な役割を担う筋肉です。日常のほとんどの動きを支えているといっても過言ではありません。立つ・座る、歩く・走る、階段の上り下り、しゃがむ・かがむ、といった日常の動きのほとんどが、腸腰筋が伸び縮みすることを起点に行われます。
たとえば、腰痛ワンでは、歩くときに、歩幅が小さくなっている方に対して、「溝内(みぞうち)から意識して歩きましょう!」という指導をします。これは、溝内からついている腸腰筋を意識して歩くことで、足が上がりやすくなり、大きな歩幅で歩けるようにするためです。
じつは、「大きな歩幅で歩く」ことは、腰痛改善、予防には、とても大切なことです。
なぜなら、大きな歩幅で歩けると、骨盤から、背骨、さらには肩甲骨まわりも動き、腰まわりの筋肉も動くことで緩みやすくなるためです。
これだけいろいろな動作に影響がある筋肉だということがわかると、腸腰筋と腰痛の関係が深いということも、想像しやすくなってきたのではないでしょうか。
お腹の筋肉「腸腰筋」が硬くなると腰痛になる!?
一見、腰痛と関係のなさそうなお腹のインナーマッスルである腸腰筋。しかし、腸腰筋が硬くなると腰痛になりやすくなります。一体どうしてでしょうか?
腸腰筋と腰は1セット!
腸腰筋は腰と対になり、1セットで背骨を前と後ろから支えています。
人間のからだは、どこかが弱まると、ほかの部分で弱い部分を補おうとするため、対になっている腸腰筋が弱まると、その負担は真っ先に腰が受けることになります。
上半身と下半身をつなぎ、からだの中心で、歩く・立つ・座る・上る・下りる・しゃがむ・かがむなどの動作をはじめとした、上下・前後にからだを動かす役割を一手に担っている腸腰筋。そんな多機能な腸腰筋の分まで、からだを支えなければならなくなった腰の負担は図りしれません。だからこそ、腸腰筋は、ダイレクトに腰痛の原因にもなり、腰痛予防のきっかけにもなるのです。
なぜ腸腰筋は硬くなるのか?
では、なぜ腸腰筋は硬くなるのでしょうか?
腸腰筋は、背骨から足までついています。腸腰筋が縮まることで、座る姿勢が安定し、足が上がり歩くことができます。
とくに、デスクワークなどで長時間座ったまま動かずにいると、腸腰筋は縮まったまま硬くなってしまいます。
さらに、腸腰筋は姿勢の影響も受けやすく、反り腰では伸びた状態、猫背やガニ股では縮まった状態で硬くなりやすくなります。
腰痛予防のためには何が必要?
腰痛予防のためには、何が必要でしょうか?それはズバリ、
①腸腰筋の柔軟性
②腸腰筋の筋力
です。
腸腰筋が柔軟な状態で、歩く・立つ・座る・上るなどの動きの際に、腸腰筋がきちんと伸び縮みする、つまり、筋力がはたらくことで、腰の負担は最小限になります。
【腰痛改善法ステップ①】腸腰筋の柔らかさを取り戻そう
腰痛改善の方法の1つ目は、腰痛の際に硬くなっていることが多い「腸腰筋の柔らかさを取り戻す」ことです。腸腰筋だけでなく、硬くなった筋肉の柔軟性を取り戻すには、「のばす」「ほぐす」「はがす」という3つの要素が必要です。
「のばす」はストレッチ、「ほぐす」は指圧するように筋肉に圧をかけること、「はがす」は筋肉と筋肉が癒着(癒着)しくっつき身動きできなくなっている状態をはがして動きやすくすることです。
この「のばす」「ほぐす」「はがす」がひとつでも欠けると、腰痛の改善がされないことがあります。
たとえば、マッサージや指圧などの施術は、主に筋肉を「ほぐす」アプローチで柔らかさを取り戻します。マッサージに通っているのに、腰痛が良くならない場合は、「のばす」や「はがす」が足りていない可能性があります。「ほぐす」だけでは筋肉の柔らかさを十分に取り戻せていないためです。
ヨガやストレッチは、主に筋肉を「のばす」アプローチです「ほぐす」や「はがす」アプローチが足りていない場合、筋肉が十分に伸びない、または、腰痛が良くならないといった結果になりかねません。
腰痛ワンでは、「のばす」「ほぐす」「はがす」を組み合わせたアプローチを大切にしています。それは、代表の伊藤晃一が、施術やヨガ、ピラティスなどさまざまな分野での経験を積む中で、筋肉が回復するためには、「のばす」「ほぐす」「はがす」3つの全ての要素が必要だと気づいたことがきっかけです。そして生まれたのが「リカバリープログラム」と「リカバリー体操」です。
リカバリー体操は、ご自宅で実践可能です。このあと、腸腰筋を「のばす」リカバリー体操を紹介しますので、試してみてください。
【腰痛改善法ステップ②】腸腰筋の筋力を取り戻そう
腰痛改善のためには、腸腰筋が柔らかくなるだけでは不十分です。筋肉は、柔らかさを取り戻せばOKではありません。たとえ柔らかい状態でも、使わなければ衰えてしまうからです。からだを動かすための機能が衰えている場合は、その分からだの部分のどこかが働かなければならず、腰やほかの部分への負担はかかり続けてしまいます。
ちなみに、もし、筋肉が硬い状態で無理に筋力を戻すために動かそうとすると、まわりの関節や筋肉に負担がかかり、腰やほかの部分も痛めてしまう可能性があるため、腰痛改善のためには、「①柔らかさを取り戻す」、「②筋力をアップする」の順で行っていきましょう。
すぐできる腸腰筋の柔らかさアップ&筋力アップ法
今回は、
・腸腰筋を「のばす」リカバリー体操
・どこでもできて、これだけで腰痛予防になる、腸腰筋のリカバリートレーニング
を紹介します。
腸腰筋をのばすリカバリー体操
床でできる、腸腰筋ストレッチ①
膝の下にタオルやマットを敷くのをおすすめします。
ステップ①
片膝をつきます。
ステップ②
骨盤を後傾させます。骨盤を立てるイメージです。こうすることで、膝をついている側の腸腰筋を、上下方向に伸ばすことができます。
※腸腰筋がストレッチされているのは感じづらいものです。このストレッチ法は、股関節の付け根もストレッチされるため、はじめは、股関節が伸びる感覚を目安に行いましょう。
ステップ③
90秒間行います。
ステップ④
反対側も、1~3を同様に行います。
ポイント
腰が反ってしまうと正しく腸腰筋のストレッチがかからなくなってしまいます。
骨盤を後傾させた(立てた)状態をキープするのがポイントです。
さらに腸腰筋をストレッチする方法
膝をついている足を後ろに引いていくと、よりストレッチがかかります。ここでも、腰は反らないよう、骨盤を立てた状態をキープする意識を持ったまま行いましょう。
床や椅子を使ってもできる、腸腰筋ストレッチ②
床や椅子を使ってもできる腸腰筋ストレッチもご紹介します。
YouTubeチャンネル・リカバリー大学の解説動画をご覧ください。
☟
【05.トカゲランジ】リカバリー体操
座ったまま、寝たままできる!呼吸と合わせたインナーマッスルのリカバリートレーニング
~呼吸と合わせたドローイン~
ドローインとは、お腹を凹ませたり膨らましたりしながら、お腹のインナーマッスルを鍛えるトレーニング法です。
寝る・座る・立つ、まずはやりやすい体勢で構いません。今回は、寝て行う方法を紹介します。
ステップ①
仰向けに寝て、溝内の下に手を当てます。
ステップ②
息を吐ききりながら、お腹を凹ませます(指をぐっと入れて、お腹が硬くなるのを感じます)。
ステップ③
お腹を凹ませたまま、まっすぐ鼠径部(そけいぶ)までのラインを、指でお腹が硬くなっているかチェックしていきます。
さらに腰痛予防に近づくレベルアップ法
腰痛予防のためには、日常生活で、自然と腸腰筋の筋力が使えるようになることが必要です。
トレーニングで「意識して」腸腰筋を使えても、本当の腰痛予防には、もう一歩ほしいところ。なぜなら、日常生活で、会話や、家事など、さまざまなことをしながらでも腸腰筋を使えることが、真の腰痛予防につながるからです。「意識して」腸腰筋をになったら、つぎは、「無意識でも」腸腰筋を使えるようにトレーニングしていきます。
~さらに腰痛予防に近づくドローイン~
会話や何かをしながらでも、自然と腸腰筋の筋力が使えるようにするためのトレーニング法です。
ステップ①
息を吐いて、お腹を凹ませます。
ステップ②
凹ませたお腹がポコっと出ないように注意して、「1、2、3、、」とゆっくり声に出して10秒数えましょう。
レベルアップのコツ
はじめのうちは、お腹を凹ませてキープすることで精一杯でしょう。力んでしまい、声に出して数を数えるのは簡単ではありません。慣れるまでは、力んでしまってもよいので、まずは
1. お腹を凹ませた状態を10秒キープする
できるようになったら、
2. 凹んだお腹をキープして、10秒声に出して数を数える
という風に少しずつレベルアップさせていきましょう。
仙腸関節もケアすればさらに腰痛予防効果あり!
腸腰筋とともにケアしたいのが、腰痛でチェックするべき2大ポイントのもう1つ「仙腸関節(せんちょうかんせつ)」です。
腰痛の方のほとんどは、仙腸関節と腸腰筋のどちらか、または両方が硬くなっていることが原因です。
どちらも、からだの前・後の要(かなめ)で、からだを支える重要な役割を担っています。
腸腰筋のケアだけで腰痛が改善するケースもありますが、仙腸関節に問題がある場合は、両方のケアが必要です。
また、腸腰筋のケアだけを行っていると、からだのバランスが崩れて痛みが出ることがあるため、からだの状態を見極めて、両方のケアを行えることが理想です。
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温めること、動かすことも腰痛予防には大切!
からだが冷えることで、筋肉は硬くなりやすくなります。
湯船に浸かる、白湯など温かい飲みものを飲む、腹巻をする、首や足首を温める、カイロを貼るなどしてからだを温めることで、筋肉は緩みやすく、硬くなりにくくなります。
また、歩くなど、動くことで血流が起きて、筋肉の柔らかさを取り戻すことにも繋がります。
長時間座りっぱなしにならないように、1時間に1回は席を立つ、15分くらいからのウォーキングを行うことも、筋肉をよい状態にキープするのには大切です。
まとめ
腰痛予防には、腸腰筋のケアが欠かせないということをご理解頂けましたでしょうか?
背骨の腰部から、上半身と下半身をつなぎ、歩く、立つをはじめとする、からだのほとんどの動きを担う腸腰筋をケアすることで、後ろで対になる腰の負担を最小限にし、腰痛予防に繋がります。
腰痛対策をしているのになかなかよくならない方は、紹介した腸腰筋のストレッチ、筋力アップ法を試してみてください。
いまは腰痛ではない方も、デスクワークの方、運転される方、長時間座ることが多い方は、じつは腸腰筋が硬くなっているかもしれません。
腸腰筋は、日中のほとんどのからだの動きに影響するため、ケアを続けることで、歩きやすくなるなど、動きやすいからだをキープすることができます。
腸腰筋のリカバリー体操とリカバリートレーニングを続けると、腰痛予防だけでなく、肩こりが改善する、ウエストが引き締まる、姿勢がよくなるという方も多いため、ぜひ継続してみてください。
腸腰筋のケアや、腰痛改善したいこんな方は
・猫背・反り腰など、姿勢改善したい方
・産前・産後の腰痛をなんとかしたい方
・産後のお腹まわりが気になる方
・育児や介護などでも、腰痛にならないからだづくりをしたい方
など、腰痛でお困りの方は、お問合せください。
腰痛リカバリースタジオONEのリカバリ―プログラムは、ひとり一人のからだの状態を見極めたうえで、ぴったりの腰痛予防、改善のリカバリ―体操をお伝えさせていただきます。
リカバリートレーナー。自身の不調を「リカバリープログラム」で改善した経験から、リカバリートレーナー資格を取得。腰痛をはじめとするからだの痛みの軽減、姿勢改善、からだの使い方をマンツーマンでサポート。こころとからだに寄り添うトレーナーとして信頼が厚い。